Salt-n-sugar

アラフィフのつれづれ

お年寄りの胸中

幸田露伴の娘で、随筆家として知られる幸田文の晩年の作。家庭画報あたりに連載されていそうな、簡素な暮らしを穏やかに見つめた真面目な筆致。終始自らを不器用な人間と謙遜しながらも、そんな自分が周りと調和し、より楽しく生きていくためには、どうすべきかに思いを馳せている。
自分の悪い癖というものは、なかなか認めたくないものだし、他人に面と向かって言ってもらう機会も少ないものだけど、彼女の場合、父露伴から今の世の中では考えられないほど厳しく、かつ愛情を込めて指導されたことで、その性情と正面から向き合うようになった。
もちろん、それがわかったとして、そうそう人の性格が変われるものじゃない。ただ、無意識のまま過ごすのと、常に意識しているのとでは雲泥の差だ。
自分もたくさんの悪い癖を持っているとは思うけど、すべてにおいてはっきり日日意識できているかと言えばまだまだだろう。親しい家族や仲間だからこそ、気づかせてもらえることに感謝する心を持ちたいと思った。

月の塵 (講談社文庫)

月の塵 (講談社文庫)